芝居小屋

プロローグ

新居建造(あらいけんぞう)邸、外構工事、造園工事 完成までの事の顛末やいかに〜〜〜〜〜お代は観てのおかえりだヨッ。

(登場人物)

新居建造(45歳) ・・・・・・ ごくごく普通のサラリーマン。温厚で真面目な割に明るい。
新居玉枝(44歳) ・・・・・・ 新居さんの奥さん。とにかく明るい人。全てにおいて大雑把で細かい事に無頓着。天真爛漫。皆に人気絶大。特にご隠居は彼女の大ファン。
新居杉太(18歳) ・・・・・・ 長男。大学生。一人っ子。 どこか覚めてるところがあるが母親似で 心やさしく大らか。
ご隠居(7?歳) ・・・・・・ 新居家が新築するまでまで住んでいた家の大家さん。今回の新築にあたって土地の世話をしてくれた。最近隠居し暇をもてあましていて、いささかおせっかい気味。
阿伊宇恵夫(?歳) ・・・・・・ 長年、外構工事・エクステリアの仕事に長年従事しています。エクステリア コーディネーター。
スクリーンの高倉健さんの『死んで貰います』のセリフに『異議なしッ』と客席から声を掛けた世代。

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一幕一場
一幕二場
一幕三場

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用語集索引

Album

芝居小屋

ブロ

(あらすじ)

新居さんは今まで、賃貸のマンションに住んでいました。そこへ、このマンションの大家さんのお世話で 
すぐ近所に土地を手に入れる事が出来ました。建物本体は昨年暮れに無事完成、お正月は快適な新居で過ごしました。
さて いよいよ年明け早々から 外構工事と造園工事がはじまります。

それでは皆様、長らくお待たせしました。これより新居家造園工事の巻。
始まり、始まり。パチ パチ パチ。

プロローグ

(正月の七草を過ぎた日の朝、ご隠居が新居家の前を通りかかります。庭には数人の職人さんと新居さんが これから始まるらしい工事について なにやら相談をしています。そこへ以前住んでいたマンションの大家さんが通りかかります。どちらかへのお年賀の帰りでしょうか、いいお気持ちらしゅうございます)
隠居 「新居さんコンニチハ・・・・・ああっ いやいやあけましておめでとう御座います。今年もいい年になりそうですね(^⊆^)」
新居建造 「これはこれはご隠居さん 明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくおねがいします。」
(顔見知りの職人さんたちに向かって)
隠居 「ほぅ ほぅ ほぅ これはこれは皆さんもご一緒ですか・・・・・。おめでとう御座います。今年もどうぞよろしくお願いしますよ。  さてさて、いよいよ庭にの工事がはじまりますかナ。!」

建造

「はい、おかげさまで いよいよ最後の仕上げです、終わりよければ全てよしでしょうか。阿井さんはじめ職人さんも 皆さん、大家さんに紹介していただいた方ばかりですので 安心してお任せできます」
隠居 「そうですか それはそれは・・・・・!!!、みなさん 昔からうちの家作の面倒を見て貰ってるからネッ、いい人達ですよ。皆近所住まいだし なんでも相談しながらやってみて下さい。 ホッホッホッホッホッ!!。ところで奥方はお出かけかな。」
(ご隠居は、いつも新居さんの奥さんの玉枝さんと話しをするのを楽しみにしています)
建造 「ええ、ちょっと近所まで買い物に出掛けてます。」
隠居 「ホオー ホオー ホオー・・・それは残念、しばらくお顔を見ておらんでの 相変わらずかな?」

建造

「ええ、おかげさまで 相変わらずです・・・・・。」
( そこへ宅配便が届く。)
宅配便 「おはようございます。新居玉枝さんはこちらですか?」
建造 「エエ そうです。」
宅配便 「毎度有難うございます。おとどけものです」
( 新居さんが四角いダンボール箱に入った荷物を受け取っていると、そこへ 庭の設計から工事の段取りなどをしているエクステリアコーディネーターの阿伊さんが息を切らしながら現れた)
阿伊 「どうも遅くなって申し訳ありません。これはこれは ご隠居さんもお見えでしたか。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
建造 「おめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします。職人さんも先ほどお見えになりました。一服したら工事の打ち合わせをしましょうか・・・・・。       ところでご隠居さん、今届いた荷物を 何だと思います。田舎の私の父から届いたんですけどね。」
(ご隠居さんは宅配便で届いた荷物を手にとり少し考え込んでいたようだが 思い当たる節も無いように 新居さんに荷物を返す)
隠居 「ハテ!何でしょう。とんと見当がつきませんナ。何かの機械のようですが・・・。」
建造 「実はねー、餅つきの器械なんです。」
隠居 「餅つきの器械?????来年の正月はまだ一年先じゃと思うが・・・気の長い話じゃナ。」
建造 「いえね、これには色々と訳ありで・・・去年の暮れの大晦日にうちの玉枝が正月用の餅を近所へ買いに行ったら あいにく売り切れて無かったらしいんです。」
隠居 「ありゃありゃ それは困りましたね。お餅の無い正月ってのも寂しいもんですからネ。」
「ええっ  でも まぁ 無ければ無いで マァー寂しいけど仕方ないなと・・・・ 特に困る事もないなって思いますでしょ?ご隠居さん」
隠居 「まァ そうですナ〜〜 仕方ないですもんネ。」
(新居さんはここまで話すと 思い出し笑いなのか ひとりでに顔が笑ってる様に見える。)
建造 「ところがどっこい そんな事であきらめるような人じゃないよっ てーのがうちの玉ちゃんよ・・・・・どうだいご隠居さんまいったか。」
(新居さんは酒が入ってる訳でもないのに 落語に出てくる熊さんかハッツアンになりきったかのようだ) 
隠居 「まいったかと言ったって まだなんにも聞いちゃいないでしょ!!!新居さん・・・・・・・早くその先を話しなさいよ。」
(新居さんは頭を掻きながら)
建造 「ども、失礼しました。ま、その日も一段落し 大晦日の夜ですから 一杯やりながらテレビ観てると、なにやら後ろでゴソゴソ音がするじゃありませんか!!! 」
(話してるうちに 三々五々くつろいでいた職人さんたちも 周りに集まってきた。そうすると新居さんも 段々話に熱が入ってくる)
建造 それでね、何気なく振り返ると・・・ なんと玉ちゃんが 左脇にすり鉢 右手にすりこぎを持って 餅ついてるんですヨ。すり鉢の中にはちゃんともち米も入ってましたよ。どうです、すごいでしょ!!。息子も振り返った目は点になってましたからね。すぐにまたテレビの方を向きましたけど、観てるあいつの肩は笑いで震えてましたね。ヒッ ヒッ ヒッ ヒ 結構長い時間震えてましたヨ。」
隠居 「奥方はその間も、小脇に抱えたすり鉢で 餅をついてるわけですな」
建造 「エエそうです。相当長い時間かかりましたのでね。私も少しですが手伝いました。みかねて息子も手伝ってました」
( それから、新居さんは 時間はかかったが小さめの鏡餅が出来た事、餅の中は米の粒が沢山残ってた事、翌日にはカビで真っ黒になった事などを皆さんに 面白おかしく話して聞かせました。)
阿伊 「新居さんはそのお餅を食べたんですか?。」
建造 「もちろんです!」

味はいかがでした?」
建造 「そりゃもうーうまかったーーー!努力に敬意を払って食べれば どんなものでも おいしいんですよ。それに僕だって少しだけど 手伝いましたからね。それでその話を 田舎の父に正月のオメデトウコールで話しましたら 大喜びしちゃってもう〜・・・それでお年玉にこの餅つき器を買って送ってくれたと こういう訳なんです。」
( そこへ、玉枝さんが買い物から帰ってくる。)
新居玉枝 「あらーッ 皆さんお集まりいただいて・・・・・明けましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。
今、工事の打ち合わせしてるところですか?」
( 皆、ニコニコ笑いながら、玉枝さんに注目しています。)

建造

「皆さんにお茶でも淹れてくれるかな。」
玉枝 「はいはーい、今すぐ用意しますね。」
(玉枝さんは話の内容には全く感心を示す様子も無く 買ってきた物を抱えて家の中に入っていく)
阿伊 「さーてと、早く仕事を始めないと 今年中に工事が終わらなくなりますよ。」
隠居 「私は構いませんよ。」
建造 「ご隠居ッ、そんなこと言っちゃ困りますよ・・・・・・!!。」
(わいわいがやがやと にぎやかですが、さてこの工事、数ヶ月間というもの色々紆余曲折を経て今日に至りました。その詳細は第二幕からご覧下さい。話は半年前に遡ります。)

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プロローグ

第一幕  第一場


新居建造邸の新築工事、10ヶ月前に遡って物語りは始まります。
(新居さん一家が現在住んでいるマンションの居間で 新居建造さん、奥さんの玉枝さん、エクステリアコーディネータ−の阿井さんが集まり、これから外構工事、造園工事、 その他、外廻りの計画についての打ち合わせが 始まるところです。)
阿伊宇恵夫 「コンニチハ、今日から外構工事の打ち合わせを始めます。よろしくお願いします。」
新居夫妻 「よくいらっしゃいました。こちらこそ よろしくお願いします。」

(阿伊さんはい どうもいささかせっかちなところがあるらしい。挨拶もそこそこに 打ち合わせにはいる阿井さん。)
阿伊 「建物本体の図面を見せていただけますか。」
(新居さんは 工務店との打ち合わせで ほぼ内容も固まり、後は着工を待つばかりの建物本体の図面を取り出した。配置図、平面図、立面図、それに敷調図、設備図、求積図をそれぞれコピーして 阿井さんへ渡せるようにしてある。)
(阿伊さんは、それらの図面、書類関係に一通り目を通したあと)
阿伊 「随分段取りよく揃えていただいて 恐縮です。」
「事前に連絡をいただいていた図面関係のコピーです。もし不足しているものがあればおっしゃって下さい。」
新居玉枝 「途中でゴメンナサイ 阿井さんは お茶とコーヒーはどちらがよろしいですか?。」
阿伊 「有難う御座います。じゃー お茶をお願いします」
(玉枝さんはお茶を入れに 席を立つ。)
阿伊 「へェーー、総二階建てで外壁はタイル貼りですか。素晴らしい!。出来上がりが楽しみですネ。」
新居建造 「ええ!私たちも 待ちどうしいですね」
阿伊 「完成予定はおおよそ何時頃ですか」
建造 「本体工事は年末一杯で引渡しの予定です。お正月は何とかぎりぎりで新居で迎えられそうです」
阿伊 「へえーー。そうすると来年はいいお正月が迎えられそうですね。本体工事は、どちらで施工されるんですか?」
建造 「『スズケン』さんにお願いしてます。ご存知ですか?」
阿伊 「はい、『スズケン』さんなら 私もよく存じてます」
(持参した資料をテーブルの上に出しながら)
阿伊 「社長が自分で部材をアメリカから買ってきて建てるって方でしょ。いささか頑固で ゆうずうがきかないけど いい仕事をするので、すでに建てられた方からは喜ばれてますね」
建造 「実は、ここのマンションの大家さんの古い知り合いらしくて 少々の無理は聞いてくれるよ!!!なんて云われて」
阿伊 「それはそれは、ところで『スズケン』の社長はもう アメリカへは行かれましたか?」
建造 「ええ多分、今頃はアメリカに居るはずです。」
阿伊 「『スズケン』さんですと外壁のタイルは 乾式のハンギングではなくて 在来の湿式ですね。」
建造 「そうです。乾式の問題点を色々説明していただき 最終的には経験の豊富な『スズケン』の社長を信頼して在来の湿式に決めました。」
阿伊 「そうですか。スズケンの社長は乾式タイルの最も初期 およそ20年位前から経験していらっしゃるのでよく長所短所をご存知ですので信頼できると思いますね。」
阿伊 「それでは、本題に移りましょうか。これからのお話の進め方ですけども『これだけはぜひやりたいな』というような御希望はありますか?」
建造 「特にありません。強いて言えば駐車スペースでしょうか。現在、車は一台ですけど 何年かのちにはもう一台追加できればありがたいなという事 それから設備関係ですね」
(健造さんは 手元の資料の中から 一枚のパンフレットを取り出しながら)
建造 「『スズケン』さんから相談を持ちかけられてることの一つですけど 電気、ガス、水道の検針を敷地の中に入らずにできるようにしたらどうですかと・・・・・・。金属製の箱があって その中にメーター類を納める事ができると聞いているのですが・・・・・ええと これが預かってるカタログです」
(新居さんはそのカタログを阿井さんに渡しながら言った)
阿伊 「ハイ、えーと、これも最近いろいろなデザインの物が沢山でてるから検討してみましょう
「あとはこの建物に合うデザインをしていただければと思っています。むしろ、阿井さんと相談しながら、色々教えていただきながらお話を進められればと思っています」
阿伊 「判りました。まず 建物が 総二階建てに外壁がタイル貼りと云うクラシックなヨーロッパ調という特徴があります。で これから建てる場所はむしろ 日本的な下町風といった感じなので 建物との統一性ものも勿論重要な事ですけど、見方によっては少し違和感を覚える可能性があります。その場合、庭という空間を使って うまく緩衝させる役目を外構もしくは造園工事に持たせたらどうかな と思います。」
建造 「なるほど、我が家が つまりあまり日本的ではないこの家を 町並みの中に・・・んー なんと言うか うまく溶け込むことも必要だ・・・・とおっしゃる訳ですね。」
阿伊 「そうです。 ジョージアン様式という古いヨーロッパを江戸の下町に持ってきたとしたら そのふたつをうまく調和させる為に 何らかの緩衝地帯が やはり必要ではないでしょうか?。」
(いささか思惑が外れた観のある建造さんである)
建造 「なるほど〜〜。ひとつ、質問しても良いですか。」
阿伊 「ええ。」
建造 「最近、これから建てる我が家と同じような形の家を 時々見かけるようになりましたけど、門や塀も建物と同じイメージでデザインされてる例が多いようですが、今の、阿井さんの話からすると少し違うかなと言う印象ですけどいかがですか?。」
阿伊 「そうですネ。実はかく言う私も同じような仕事を沢山しています。町並みによっては むしろ個性を全面に押し出したほうが良い場合いもありますし さっき言ったように 我が家を見るとき 前面道路から見るという位置を もう一歩下がって 町全体の景観としてみる事も必要ではないのかな。とも思う訳です。」
(建造さんもうなずていると そこへ玉枝さんがお茶を持って入って来る。)
新居玉枝 「お茶をどうぞ・・・なんだか話が難しくなってきてるの」
「そうでも無いですけどね。どんな風にしようかと言うんで まァーどんなんでも良いんじゃないかなってことを今、話してました。」
建造 「はははッ  そう云う事になりますかね。結局、そういう事ですね!!!!。」
阿伊 「住宅は これから毎日 生活をしていく場所であり、道具でもアルゾ と考えるならば 使い易さも 勿論考えなければいけない訳で そこで庭が使いやすいと云う事はどういうことなのか? も考えなければならない」
建造 「なるほど!!!!」
玉枝 「私は手間の掛からない庭がいいわネ」
(掃除の嫌いな玉枝さんにとっては とても大事な事です)
阿伊 「そうですね。掃除のし易さやとそれに伴う維持費はどうなるか・・・・・ ただし、使い易さは理想や夢と仲々相容れない場合が多いいのも覚悟してくださいね。」
玉枝 「あらァーそ〜う」
(阿井さんは 出されたお茶をを飲みながら、一息ついて。)
阿伊 「奥さんは 何かご希望がありますか?」
(思い出したように建造さんの方を向いて。)
玉枝 「ねぇあなた、一度北陸に旅行したときのことをおぼえてる?」
建造 「えーーと・・・・ああ思い出した」
玉枝 「あそこで泊まった旅館の玄関、黒い石が貼ってあったでしょう」
(アッそうだ・・と思い出したように)
建造 「えーっと そうだそうだ たしか仲居さんに名前を聞いて 控えてあったんだ チョッと待ってね」
(そう言うと建造さんは手帳を取りに立ち上がった)
建造 「たしか玄晶石(げんしょうせき)とか言ったかな・・・・   阿伊さん ご存知ですか?」
阿伊 「ええ、黒くて木目みたいな模様のついてる石ですね。」
建造 「そうです そうです。でもあれを 玄関ポーチやアプローチに使えませんか?」
阿伊 「使えます。技術的には問題ありません。でも新居さんその旅館は和風じゃありませんでしたか?」
玉枝 「おっしゃる通りです。でも私にはその石張りしか見えてかったんです。とっても豪華な感じがして 印象的だったのよね。ぜひお願いしたいの!」
(喜ぶ玉枝さんにいささか申し訳ないなと言う顔をした阿井さんがおそるおそる玉枝さんに尋ねる)
阿伊 「判りました。その前にひとつお伺いしますけど その旅館の玄関と言うのは 旅館の入口の玄関ではなくて中の個室にそれぞれついてる 小さな玄関のことですね。」
建造 「そうです。おっしゃる通りです。」
阿伊 「玄晶石は薄くはがれる性質を持っていて そのはがれた面の模様が木目に似てて仲々趣があり にごりの無い黒とあいまって上品な雰囲気を醸し出していますね。」
建造 「この洋風の雰囲気の建物にはどうでしょう。うまくマッチしますでしょうか?。」
阿伊 「ええ、私も好きな組み合わせですし 落ち着きがあって申し分ないと思います。ただ 欠点もあります」
建造 「といいますと?」
阿伊 「あくまでも参考までに申し上げますけど この石は黒いだけに ホコリがとても目立ち易いと云う事です。履物が泥をもって上がりますし、風で運ばれてくる小さな砂も相当量あります。また 水できれいに洗っても 乾いた後は白っぽいというか 誇りっぽく見えてしまいます。綺麗に維持する為には とても手が掛かると云う事ですね。」
阿伊 「旅館の中だと 上履きやスリッパですし それに、仲居さん達がいつも気をつけて掃除してくれてるのできれいに維持していられると思いますよ。まぁー そういう意味では あまり一般家庭向きではないのではないかと思います」
阿伊 「それに玄関ポーチから門廻りのアプローチまで含むと かなり広い面積になりますから 毎日のこととなると 大変だと思いますけど」
玉枝 「ふーん・・・・・・そうかー」
(うなずきながら考え込む玉枝さん。)
阿井 「ここはひとまず 奥様に主婦としての立場から お考えになっていただいたらと思います。ひとつ宿題にしておきましょう。」
玉枝 「ええ わかりました。どれくらい主人が掃除を手伝ってくれるかと云う事ですね。」
建造 「おいおい まってくれよ、そう言う事じゃないってば・・・・・・・」
(玉枝さんの半ば本気とも思える冗談に 大喜びする阿井さん。)
阿井 「エーっ、あっはははは・・・・・そうですね 奥さんのおっしゃる通りです。」
建造 「まいったなー。」
(頭を掻く建三さん)
玉枝 「でも玄晶石を初めて見た時 すてきだって あなたも 言ってたでしょう。どうしても使いたんだけどナー」
(阿伊さんに向き直り)
玉枝 「ねぇー 阿伊さん キレイに維持する方法って 掃除以外に何か無いかしら。」
阿井 「まったく無い訳ではありませんが・・・・・・」
玉枝 「どんな方法?」
阿井 「ワックス!。タイル用のワックスを時々塗るという方法ですね。」
玉枝 「阿伊さんは経験あります?」
阿井 「自分ではありません。ただお客さんで やはり同じような事で苦労された方がワックスを使っていらっしゃいましたね」
玉枝 「タイル用のワックスというのが有るんですか どうですか使った感じは?」
阿井 「そうですね、室内は暗いので それ程感じませんが、外で見ると 少し油っぽいかな という感じがしました。それが気になるかというと、どうでしょう!! 私はチョッと気になりましたけども それはあくまでも感じ方だと思いますが・・・人それぞれかな??と思います。それと 最初は気になったけど、慣れたら全く感じなくなったとそのお客さんは言ってらっしゃいましたね」
(物の感じ方には、個人個人で違いがあります。好き嫌いもあります。日によっても違いますし 朝と夜でも違います。毎日の生活を送る上で できるだけ負担に感じないようにする事も一つの選択肢ではないでしょうか)
玉枝 「そう!!!」
(玉枝さんは しばらく考え込んでしまう。)
阿井 「今すぐ結論を出す必要はありません。ゆっくり考えましょう!!。」
玉枝 「そうですね。」
阿井 「玄関ポーチからアプローチへと進んで 道路へ出ますけどこの廻りに何かご希望はありますか。例えば門扉をつけたいとか 車庫の屋根はどうするかといった事ですが」
建造 「そうですね。何年か後に子供が車を買った時にもう一台分 車庫が必要になるかな という事ですね」 
阿井 「今は一台でよろしいんですね」
建造 「はい」
阿伊 「もし、門扉やフェンスを特にお考えになっていらっしゃらないという事であれば 色々融通もきくと思いますが」
建造 「考えてないというよりも むしろご提案をいただけると ありがたいのですが・・・」
阿伊 「はい」
建造 「敷地に制限がある以上、車は邪魔ですね」
阿伊 「そうですね。私の場合どうしても庭を主体にいつも考えますので まァー出来ればないほうが ありがたいですけどね。逆に車好きの方にとっては むしろ車庫を主体に考える事もありますので、それは人様々ですね」」
(そんなことをはなしているとていると となりの部屋で 電話の鳴る音がする)
玉枝 「あら 誰かしら。ちょっと失礼します」
(そういって出て行った玉枝さんが再び戻ってくると建造さんにたずねる)
玉枝
「あなた、何とかって会社のの人なんだけど?じゅにがくぼーなんてしってる?」
(怪訝な顔をしていた建造さんが はっと思い出したように)
建造 うん、すっかり忘れてたけど思い出した。コンサートの招待状に応募したんだ。で、どうなんだって?」
玉枝 「抽選に当たりましたって言ってたわよ。早く電話に出なさいよ」
(建造さんはあわてて となりの部屋に走る)
玉枝 「じゅうにがくぼーってなんなのかしらね。阿伊さんごぞんじ?」
阿伊 「テレビでチョッとだけ見たことありますけど、女の子のバンドじゃないですか。確か、古い楽器を使っていたような気がしましたけど・・・・」
玉枝 「へェー、あの人がよくそんなのよく知ってたわね。私、全然気がつかなかった!!!びっくり!!!」
阿伊 「みんなきれいな人ばかりですよ」
玉枝 「あっそ〜〜それでね・・・なっとくよヨ、阿伊さん」
(建造さんが戻ってくるまでの間、取り留めのない話をしていると 長男の杉太君が学校から帰ってくる)
杉太 「ただいま」
玉枝 「おかえりなさーい。阿伊さんがお見えよ」
杉太 「阿伊さんコンニチハ・・・・・・・・・・・」
(杉太くんはお母さんの方を向き)
杉太 「お父さんは?」
玉枝 「今電話してるわよ」
(そこへ 建造さんがでんわを終えて戻ってきた)
建造 「いや〜〜〜いや〜〜びっくりしました。”女子十二楽坊”という中国の民族楽器のバンドのコンサートなんですけれども 無料招待に応募したのを すっかり忘れてました。それが当選したらしいです。今だかって、クジなんて一度も当たった事なんてないんでホントに晴天の霹靂です。しかも、ペアチケットですって」
阿伊 「それはそれは、お目でとう御座います。すごい強運ですね。これはきっと この先なにかいいことあるという前兆ですね。どんないいことがあるか楽しみにしましょう」
阿伊 「ところで、少しだけ本題に戻させてください。さきほどの駐車スペースの件ですが、ちょうど息子さんも帰ってこられたところですのでお伺いしますけれども 就職されたら車はすぐにお買いになりますか?」
(事の成り行きを掴めぬまま眺めていた杉太君は はっと我に返ったように阿伊さんを見て)
杉太 「アッ はい、将来僕が車を買ったときの駐車場をどうするかということですか?」
阿伊 「そうです。今、考慮に入れるべきか否か。先ほどお父さんと話してたところなんです」
杉太 「僕はあまり車には興味がないし、とりあえず免許は持ってますけど 必要な時は父のを借りれば済むことですので特に、今の段階では考えていただかなくても差し支えありません。ねぇお父さん」
(父の方に向かい同意を促す杉太君に 先ほどからすっかり別の事を考えてい建造さんは)
建造 「ああっ・・・うんうんそうだね」
(全くうわのそらである)
阿伊 「今日の打合せはここまでにしましょうか。 次回は今までの話から 参考になるような資料を少しお持ちしましょう」
建造・玉枝 「そうですか?どうもすみません。よろしくお願いします」
(ここで阿伊さんは退出する。)
建造 「なんだか阿伊さんなには申し訳なかったね。急にあんな電話が入ると 打合せどころじゃないものナ」
玉枝 「阿伊さん、気を悪くしなかったかしら?」
建造 「大丈夫だと思うけどネ。それよりも、阿伊さんの宿題を先に考えてある程度方向性を出さないと阿伊さんも仕事を先に進められないんじゃないかな?」
玉枝 「そうね、スギ!あなたも考えといて」
杉太 「俺は別にどうでも構わないから お父さんとお母さんに任せるよ」
玉枝 「そう、判った」
(建造さんの方を向いて)
玉枝 「ねェあなた、やはり すぐ決めるというよりも阿伊さんともう一度話してみようか?」
建造 「うん、こちらの希望は希望として 阿伊さんだったらどうするかを聞いてみたな。こちらの希望は一応伝えた訳だ・・・・・   それからでもいい訳だネ」
玉枝 「そうね」
建造 「ところでサー、コンサートは一緒にいくでしょ?」
(””演歌一筋・五木ひろし命””を自他ともに認める玉枝さんには全く興味がない事なので一言)
玉枝 「いやーーーヨ」
玉枝 「スギと一緒に行ったら」
建造 「そんな〜〜」
建造 「スギ・・・・・どう一緒に行く?」
杉太 「オレは女子十二楽紡って聞いたことないし、よく知らないから遠慮するよ」
建造 「そうか・・・・・阿伊さんでも誘ってみようかな」
杉太 「断られると思うよ!第一、こういったコンサートに男同士で行くなんて 気持ち悪くない?」
建造 「うん、そうなんだよな・・そのとうりだよ」
(外構・造園計画という本来の目的から すっかり外れてしまい、話が全くまとまらないところで一幕一場は終わります。次の一幕二場は一週間後、同じく新居家の居間から始まります)
第一幕 第二場つづく

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