第一幕第三場



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プロローグ・一幕一場
一幕二場

(新居家の居間。ちょっと前までお茶の時間を楽しんでいた新居夫妻と息子の杉太君、庭の設計で打合せにきている阿伊さん、それにどういう訳だか いつもの大家さんの五人がわいわいがやがやとやってます
建造 「阿伊さん、先ほどおっしゃっていらした写真を見せて頂けますか?」
阿伊 「はい・・どうぞこちらです。チョッと説明しながら見ていただきましょうか」
建造 「ええ、」お願いします」
阿伊 「まず、この写真1ですが、工事が完成したあと約3ヶ月くらいして撮ったものです。ですから まだ植木自体が やっと根付いたかどうかと言う時期です。道路から庭を見るような位置関係ですね」
建造 「ほっほー なるほど、だから木の葉がまばらなんですね。どう、玉枝さん、綺麗な写真でしょ。これだったらよくわかるんじゃない?」
玉枝 「ええ よくわかるわ。ほんと 綺麗ね、素敵だわ。この床の石みたいなのもいいわね。何かしら・・・・・・・・でも随分簡単なのね」
阿伊 「ハハハハハハッ 出来上がりはそうですね。でも、この形に決まるまでは かなりの時間と労力を費やしてますけどね。ちなみに床に使っている石は御影石です」
阿伊 「こちらの写真2が庭への入口の枝折戸を見たところです。庭へのアプローチは駐車場と同じ石を使いました。又、植栽部分との仕切りも同じ石を一段だけ積んでアクセントにしてみました」
玉枝 「阿伊さんに枝折戸と聞いた時は、随分和風なのかなと思ったけど 全然気にならないわね」   
阿伊 「そうですね。僕は個人的にはあまり洋風、和風にはあまりこだわってないんですね。むしろ積極的にとりいれてるくらいですので・・・・・」
玉枝 「それにケモノ道とかおしゃってたけど、この写真4を見ると、立派ネ」
阿伊 「エエそうです。車庫と同じ材料を使って、その周囲にはきれいな砂利でお化粧してあります」
玉枝 「へぇー、土もお化粧するの!!!スッピンはいやなんでしょうね」
阿伊 「はははっ・・・そうですね。アクセントに使って見ました。この砂利は『さび砂利』といって和風庭園に多く使われる砂利なんですが・・・・・洋風だとか和風だとか関係なく、とっても自然な感じがしますでしょ?」
阿伊 「錆茶色にして、少し明るい雰囲気にと考えたんですけども・・・・・・。ただし、どんな砂利でも こういった使い方をすると、半年から一年で土の中に沈んでしまって見えなくなりますが・・・・」
玉枝 「そうなの?ふ〜ん、・・・・・・そうかもね!!!
(阿伊さんは、ここで一息ついてお茶を口にする。大家さんは話の内容にはさして興味もなさそうで、玉枝さんと阿伊さん二人の会話をニコニコしながら聞いている)
阿伊 「先ほど、ふみわけ道やケモノ道といいましたが、今回の新居邸については、この写真のようにきちッとした形にしないで、もっと雑というか原始的というかラフな形で考えています」
玉枝 「ふ〜〜ん????・・・・・・どういう事?」
阿伊 「雑木林の中に自然に出来た道を歩くわけですから、人工的な工作物はやめて、例えば、あまり物の板をつかうとか・・・・・・・」
玉枝 「!!!板???へぇーーーーー」
(頭の中で一生懸命イメージを作っている玉枝さん」
玉枝 「ふみわけ道だから、普通は何も無いわけですよね。でも、何も無いと足が泥だらけになっちゃうよね」
阿伊 「そうです。そこで必要最小限なにかあればよい、という事ですね。ただし、板を使う場合、ちょっと欠点があります」
建造 「どういったことですか?」
阿伊 「板が水分を吸うと反ってしまうんですね。端のほうがめくれ上がってきます。そそっかしい人だとつまずく可能性があります」
建造 「そそっかしい事では玉ちゃんは絶対、人さまには負けないね」
玉枝 「そうなのよネ   アハハハハ」
(天真爛漫で決してウソなどつけない性格は「そうなのよ」に自分でおもいっきり 力が入るところが 玉枝さんらしいところで 大家さんが大いに気に入ってるところでもあります。そうして自分で大笑いしてます)
玉枝 「板だといずれ、土に帰るからということもあるのでしょうね。阿伊さんって自然派志向なんですね!!!でも、あまりつまづきたくはないわ。ほかにどんなのがあるかしら阿伊さん?」
阿伊 「そうですね。あとは石ですね。自然石や、コンクリートで出来た四角い平板でもいいとおもいますよ」
玉枝 「四角いコンクリートの平板って、あのどこでも見かける白い板のこと?」
阿伊 「そうです。」
玉枝 「なんだかつまんない感じがするけどな・・・・・・」
阿伊 「そうですね。でも、一つ考えてみてください。ここはただ単に庭への通路にすぎない訳で、そうそう目立っても仕方ないと思いますね。むしろ、さりげなく仕上げたいなとおもいますけど」
玉枝 「おっしゃるとおりかもしれないわね」
(今まで、あまり興味なさそうにしていた杉太君が独り言の様につぶやいた)
杉太 「俺もそう思うな。何にも無くて、例えば、落ち葉だけで、その上を歩くというのもいいと思うよ」
大家 「ワシ同感じゃ。いずれ その内、杉太にも子供が出来たら 多分、いい遊び場になると思うしな。飛び石というは歩幅を決めさせられるので 年寄りや子供には歩きにくいもんなんじゃ。それに歩くといってもせいぜい、7〜8歩か10歩くらいなもんじゃろ。気にすることはないって」
玉枝 「そっか、それもそうね。でもね大家さ〜〜ん、私は絶対におばあちゃんとは呼ばせないわよ」
大家 「いやいや、こりゃ失敬。当面は、玉ちゃんとでもよんでもらいますかな」
玉枝 「杉太には、まだまだ子供は出来ないということです。作らせませんということです」
(玉枝さんはどうもおばあちゃんと呼ばれることが 大きらいらしい。しかし、実際には孫が出来たら出来たで すぐに順応してしまうのも又、玉枝さんらしいところです)
阿伊 「枯れ葉が沢山落ちて溜まると、ミミズも増えれば 小鳥も沢山集まってくるかも判りません。そうなれば楽しいでしょうね」
玉枝 ミミズ?」
阿伊 「そうです。ミミズです」
(ミミズと聞いて玉枝さんの顔がパッと明るくなる」
建造 「実はね阿伊さん、この人は動物の好き嫌いがチョッと変わってるんですよ」
阿伊 「へッ、どういう風にですか?」
建造 「動物園に行くとね、ずっと見てるのは ワニや蛇などの爬虫類なんです。ほかの人みたいにパンダやコアラにはあまり興味なさそうなんですね。そのかわり、ワニやトカゲの前からは動こうとしません。僕なんか足早に通り過ぎるほうなんですけどね」
(建造さんは玉枝さんに向かって)
建造 「あなたはミミズも好きなの」
玉枝 「嫌いじゃないわよ」
阿伊 「へー驚いた。大抵の人はこの話をすると嫌がりますけどね。だから、あまりしないんですが・・・・・」
阿伊 「でも、これで話がしやすくなりましたね。昔は残飯なんかは庭に穴を掘って埋めると、そこへミミズがきてそれらを土と一緒に食べて 有機物を摂取した残りの土は違った栄養分を含んでお尻から団子状になって出ます。団子状になった土の周りは空気を含んでフワフワになって植物の根が張りやすくなると同時に、空気も供給してくれるわけですね。植物がよく育つ条件の一つになります。ここではむりですが ニワトリを飼うと穀物と一緒にミミズも食べるので とってもおいしい卵が取れるそうですよ」
玉枝 「ニワトリは朝が早いからうるさくて!!」
阿伊 「ごもっとも・・・・・・」
阿伊 「チョッと話は横道にそれますが、世界で一番大きいというか、長いミミズはオーストラリアにいて、長さが3.5m位になるのだそうですが、今までで発見された最も長いミミズは約7mあるそうです」
玉枝 「ななめーとる????」
大家 「それは又、すごいですな。太さもやはり太いのですかな?」
阿伊 「いいえ、ミミズですから胴体の直径3mm〜5mm位でしょう」
玉枝 『なんだか毛糸みたいね。セーターでも編めそうな感じだわ」
大家 「ミミズのセーター?」
玉枝 「そう。ミミズのセーターよ」
玉枝 「夏、しまうときは庭に埋めとけばいいでしょう。収納に便利よね」
(かなり、話は横道にそれてゆく。阿伊さんも慣れてきて、適当に相槌をうっている。)
大家 「でも、土の中では大きくなりませんかナ?」
玉枝 「そうねー、ひょっとしたら ひょっとするわね」
阿伊 「 うーん、なるほど!!!!その可能性大いにはありますね」
玉枝 「判った。ねェー阿伊さん ミミズって何年くらい生きるの?寿命なんだけど?」
阿伊 「おおよそ、20年位らしいですよ」
玉枝 「そうしたらね、子供の時に作るのよ。そして、段々大きくなっていけば ずっと着れるじゃな〜い。どう。いいアイデアでしょう?」
建造 「玉ちゃん、今日は随分冴えてるよ」
(建造さんがあおる)
大家 「早速ウチの孫にはなしてみよう!」
建造 「ぜったい、いやだといいますよね」
玉枝 「きっと冷たくて着てられないわヨ」
大家 「・・・・・・・・・!!!」
阿伊 「??????今までの盛り上がりはなんだったんでしょうか」
(盛り上がるのも早いが、冷めるというか、忘れることに関しても玉枝さんはすばやいのです)
玉枝 「さっ阿伊さん先に進めましょ」」
阿伊 「あッは はい」
阿伊 「なんだか、忘れてしまいましたね。どこまでお話は進んで今したっけ?」
玉枝 「あらっ困っちゃったわね。ミミズがいきなり出てきて どうなったのかしら」
阿伊 「そうです、そうです。つまりですね、ミミズの住める土地は植物にとっても、とてもいい土で 又、ミミズが植物にとってやさしい
土にしてくれるという事です。それを話したかったのですがそれがいつのまにか、ミミズのセーターの話になってしまって・・・・・」
玉枝 「いいのよ 気にしなくても。まだ時間はあるのでノンビリやりましょうよ」
阿伊 「そうですね。有難うございます。それでは 今回一応方向性つまり−−−道路側は開放的にして、庭と開放的な部分とは切り離して考えたい−−−に決定したということで、次回の打ち合わせでは、どういった素材を使い、どんな仕上げにするかという事を打ち合わせたいと思います」
建造 「はい、では今度はサンプル等を見せて頂けるのですね?」
阿伊 「はい、持って来たいとおもいます」
玉枝 「じゃ、今日の打ち合わせは終わりにする?」
阿伊 「はい、有難うございました。次回又、よろしくお願いします」
玉枝 「ねぇあなた、もうそろそろ夕食の時間だし、よかったら阿伊さんも一緒にどうかしら?」
建造 「うん、そうだね・・・・・・・阿伊さんご都合はいかがですか?」
(玉枝さんの方を向いて)
建造 「ところで、今日の夕飯は何なの?」
玉枝 「カレーよ!!!どうですか阿伊さん特別なご馳走じゃないけど、ごいっしょに」
大家 「あの−−−私もいいですかな?」
(ニコニコして成り行きを見ていた大家さんが声をかける)
玉枝 「あらっごめんなさい。だって大家さんは最初からそのつもりなんですもの。一緒にたべましょ」
阿伊 「それでは、私もお言葉に甘えてご馳走になります」
(すっかり玉枝さんのペースに乗せられた格好の皆さんは 食事の用意ができるまで三々五々おしゃべりしたり 資料を見たりで、時間を過ごします。新居さんにすればこんな時間のすごし方の方が かえって色々な疑問などが出てきて新鮮な気がするみたいですね。それに 阿伊さんも杓子定規ではなく、本音の部分で話せたりと、それなりに説得力があります。そうすると話は必然的に業界の内部事情や 元はどうだったのか、将来、どう変わっていくのか等の話しにまで進みます。これらの事に関してはこれからの会話の中で少しずつご披露したいと思います)
玉枝 「できたわよー!!!」
(玉枝さんの声に、皆のおしゃべりもやみ、あたりにカレーのにおいがたちこめてた)
玉枝 「どうぞ、みなさん召し上がってください。お口にあうかどうか」
(盛られたカレーを見て声を上げたのは大家さんだった)
大家 「ずいぶんお肉が大きいですね。食べ甲斐がありそうだ。入れ歯でも大丈夫ですかな?」
玉枝 「大丈夫ですよ。安心して食べてください」
阿伊 「ずいぶん大きなお肉ですね〜〜〜」
(一個が五センチ角はあろうかという肉の大きさに、思わず声をあげる阿伊さんです。)
玉枝 「ナイフとフォークをお持ちしましょうか?」
阿伊 「そんな・・・・・!!!・・・でもしっかり食べたぞという満足感はありますね」
玉枝 「・・・・でしょう!!!私もいつもそう思うから 大きい肉にするの。だって小さいと食べた気がしないじゃない?」
建造 「この間の さつまいもの炊き込みご飯も お芋さんが大きくてすごく食べた気がしましたよ!なんてったって サツマイモが一本丸ごと入ってましたからね。炊き込みご飯というよりも ただご飯と一緒に芋をふかしたと言う方が 正しいような気もしましたけどね」
玉枝 「そういう事もあったわね。たまには私だって失敗することも・・・あ・る・の!!!。ねぇ大家さん」
(一人、笑いながらやりとりを聞いていた大家さんは)
大家 「そうですよ。玉枝さんのおっしゃるとおりです。あなたは間違っていません」

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第一幕第四場

(前回の打ち合わせからおよそ一週間、いつもの部屋に、新居さん新居さんと奥さんの玉枝さん、杉太君はまだ学校から帰ってきていない。大家さんは暇だからそのうちに来るだろうという状況で打ち合わせが始まった。)
こんにちはカレーライス、ご馳走様でした。おいしかったです」
「良かったわ、またどうぞ」
恐れいいります。ここからは工事中で御座います。ご利用の方には大変ご迷惑をお掛けしますが ご協力をお願いします。